ハサミ男/殊能将之

あらすじ

美少女を殺害し、研ぎあげたハサミを首に突き立てる猟奇殺人犯「ハサミ男」。

三番目の犠牲者を決め、綿密に調べ上げるが、自分の手口を真似て殺された彼女の死体を発見する羽目に陥る。

自分以外の人間に、何故彼女を殺す必要があるのか。「ハサミ男」は調査をはじめる。

精緻にして大胆な長編ミステリの傑作。

（BOOKデータより引用）

感想

はい、この作品にも騙されました。何をどうやって騙すんだろうと思っても何も気付かず騙されました。

これは完全に「思い込み」で誘導させる作品でしたね。

殺人鬼である主人公が、自分の殺人方法を模倣され、その真相と犯人を追求しようとする。

主人公のモットーは「なぜ？」ではなく、「どうやって？」だ。

殺人班が探偵のように推理を進める違和感がおもしろい。殺人犯ながら知能の高さが垣間見られるため、ちょっと応援したくなるかも。

また、警官たちも事件の推理を進めますが、そっちのストーリーといい感じに絡み合います。警察官の伏線の動きもあり、回収時に解説されます。

一人称で視点を変えてストーリー展開されるのがいいですね。主人公のサイコパス性もさることながら、主人公の中に潜む妄想人格とやりとりする様も見逃せません。直接事件に影響しなくとも主人公の人格形成には影響していることがわかります。

ここいいなと思ったのは、エンディングでハッピーエンドに見せかけて根本的にパッピーエンドにはなっていないこと。ベタな伏線だけどそれがいい！

あまり感想を言うとネタバレになるので、感想の代わりにと言っちゃなんなんですが、

最後の印象に残った台詞は3つ紹介します。

わたしは「なぜ」とは問わない。わたしが考えるのは「どうやって」だけだった。

ハサミ男

「おまえ、本当にちゃんと撮ったんだろうな」

村木

「きみは狂ってないし、病んでもいない。なぜなら、きみ自体が狂気であり、病気だからだ。ぼくはたぶん頭がおかしくなっているし、深く心を病んでいるのだろう。きみはぼくの病気の〈症状〉なのさ」

医師

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