文春文庫
あらすじ
ヒロイン古倉恵子は三十半ばだが、正規の就職をせずに大学時代に始めたコンビニのアルバイトを続けている。
子供の頃から変わり者で、人間関係は希薄、恋愛経験も皆無。という半生を過ごした古倉。
大学時代、コンビニで仕事を始めたことをきっかけに「周囲の人たちの真似」をしたり、妹の助言を聞くことで、普通の人らしく振る舞う方法をようやく身につけた。という経験がある。
古倉はそのような経験を、これまで世間一般の人間の規格から外れていた自分が、初めて人間として誕生した瞬間と位置づけていた。
以来古倉は私生活でもそのほとんどを「コンビニでの仕事を円滑に行うため」という基準に従って過ごしつつ、なんとか常人を演じ続けてきた。
しかし、自身の加齢、及びそれによる新たな世代の人間との干渉が増えたことにより、そのような生き方は徐々に限界に達しつつあった。
そんな時、古倉はかつての元バイト仲間の白羽という男と再会する。
ひょんなことから白羽と奇妙な同居生活を始めることになった古倉は、その状況を周囲の者達に「同棲」と勝手に解釈され、囃し立てられ、若干の戸惑いを感じるも、冷静にそんな彼らを観察し、白羽との関係を「便利なもの」と判断する。
やがて古倉は…
(Wikipediaより抜粋)
感想
芥川賞受賞し累計100万部出版されたこの書籍は、まず、めっちゃ短いです。電車内とかで読んでサクッと読み終えられるほどなので、読書が苦手な方でも手に取りやすいと思います。
白羽という男が登場してからもっとゴタゴタドロドロすると思ってたのですが、結構あっさりした印象です。
僕がそういうのを求めすぎていたのかもしれませんが。(笑)
強いて例えるならば、このヒロインは特化型のAIロボットのようでした。
ある特定のコミュニティ(ここではコンビニ)内では、呼吸するかのごとくフィットしているが、それ以外のことは皆無。
彼女はコンビニのために生き、自分のためにコンビニがある(と思っているでしょう)。
いかに合理的にコンビニで働くかということに彼女の人生がかけられている。
清々しいようなエンディングとして表現されているようにも見えますが、
コンビニでアルバイトするのに生き甲斐を得る彼女に対していろいろな視点で見ることもできるでしょう。
働き方が自由というのは、いろいろ。
で、やりたいことをやるというのが
彼女にとっては、コンビニでアルバイトということであり、その働くリズムが好きで好きでしょうがない。
ただそれだけのこと。
正社員として企業で就労するより好きな方を優先したに過ぎなかったのでしょう。
短い小説ですが、しっかり楽しめました!
最後に最も印象に残ったシーンです。
そのとき、私にコンビニの「声」が流れ込んできた。
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